1 死者からの電話
いわゆる「顔のない死体」を警察の科学的捜査の中でいかに成立させるかに挑戦した話。
歯医者や歯科助手が患者の顔を覚え間違えるというのは現実的でなく、そもそも被害者と犯人の容姿が全く似ていないので、これに気づかないというのは流石におかしい。
多田を「おおた」と読ませるトリックはまずまず。
2 氷の死刑台
冷凍倉庫内での刺殺事件。
アリバイトリックを仕込んだうえで特定の団体に容疑をなすりつけるなど手口が巧妙。
ただ、酸素を確保するために倉庫の壁に穴を開けたというのはかなりの力業。
3 盗聴された殺人
力業という意味ではこの話がダントツ。
部屋を誤認させるために壁をもう一枚つくるというカーとかアルテの小説並みに荒唐無稽なトリックが用いられている。
その時間に室内で鳴っていたはずの音を盗聴器が拾わなかったことから、盗聴器が移動されたという仮説を導き出し、盗聴器の設置場所を知っている人物が犯人というプロセスは悪くないが、依頼者が車に乗り込んで盗聴器の説明を受けるあたりはやや不自然。
4 泊まると必ず死ぬ部屋
ケイゾクの中で一番本格度の高い話。
密室からの消失が秘密の出入り口で片付けられてしまったのは拍子抜けだが、トランプの七並べの結果で犯人がわかるというのがとても面白い。
5 未来が見える男
どことなくTRICK感のある話。
窓から顔を出した男に凶器を落とすという殺害方法だが、その反動?で窓が閉まったり死体が室内に転がるというは無理があって、作中でも「賭けだった」と予防線を張っている始末。
コートに入っていたタクシーの領収書から超能力を見破るあたりはまずまず。
ただ、この話で明確に超能力を否定していないのが後々の展開に繋がる。
6 史上最悪の爆弾魔
名前負けしてる感のあるタイトル。
ここまで遠回りする必要があったのか疑問になるほど遠回りな犯行。
コロンボあたりで似たような話を見たような気もする。
7 死を呼ぶ呪いの油絵
変化する絵の謎は、単純に絵が二枚あるというだけの話だが、重要なのは各々の認識と入れ替えるタイミング。
これによって絵が変化したと思わせる手口が巧妙。
入れ替えと言えば、水筒もそうだが、こちらで重要なのは入れ替わった事実ではなく、その中身だったりする。
8 さらば! 愛しき殺人鬼
ハンドルネームによる人物の誤認、そしてそれを利用した殺害順序の誤認とこちらもかなり本格度が高い。
動機の軽視によって意外な犯人を設定しているが、その動機というのがラストに繋がっている。
9~11
これまでと一変して超能力との戦いへ。
あくまで人を操るという超能力なので、ロジックで対応できないこともないが、終盤は推理要素がほとんどないのが残念。
この超能力犯罪との対決という構図が続編にあたるスペックや同じく堤幸彦が関わっているTRICKに引き継がれていったと思われる。