◯本
今年一番読んだ作家。と言っても3冊だけど。
泡坂妻夫は、結末だけじゃなくてスタート地点からミステリ的な導入まで想像がつかないところが良い。
常に目隠してされて、どこへ連れて行かれるのかわからない感覚が楽しめる。
化石少女、生きていたのか。
前作はなんと9年前。どうして続編が出たのか、疑問符を抱きながら読み進めると、これがやりたかったのか、と納得。
前作が好きな人ほど良い感じに頭の中をバグらされるだろう。
麻耶雄嵩の底意地の悪さが存分に出ている作品。
今年のミステリはほとんど読んでないが、多分自分の中でベストはこれ。
あまり目的意識のない読書群。
この中だとアルテはまあまあ面白かった。
この他は歴史の本とか小林泰三とか……。
今年は15冊くらいしか読めなかった。
◯映画
仮面ライダーでエヴァンゲリオンをやってる感がすごかったけど、ゴジラとかウルトラマンよりは良かったかなという印象。
いつか観ようと思ってたやつら。
『ファンタスティック・プラネット』はビジュアルからもっと荒唐無稽な内容を想像していたが、人間を支配していた巨人が知恵を得た人間に逆襲されるという結構型に嵌った内容で意外だった。
『スクール・オブ・ロック』も王道な展開なんだけど、子供たち一人ひとりに役割を与えてそこに優劣をつけないという姿勢とか色々と身につまされる部分があった。
『シザーハンズ』は大勢の人に好かれ、社会に受け入れられることよりも特定の人に愛されるために破滅を選ぶというロマンチシズム溢れる内容で、ちょっと自己陶酔的だと感じた。
殺人を犯し刑務所から出てきた元ヤクザの話。
犯罪者の社会復帰の問題とか子供の頃に経験した親からの暴力やネグレクトがその後の人生に与える影響とか様々な問いかけに満ちている。
中でも興味深いのは、一般人はわりかし「適当」に生きているという指摘で
多くの人はトラブルがあってもそれを見ないフリをしたり、
職場の陰口にも上手に乗っかったりして自分に厄介事が降りかかってこないように立ち回っているのだけども、
中には問題を見過ごせない人たちもいて、そういった人たちの生きづらさにも焦点が当てられている。
◯アニメ
これしか観てないし、内容も特に語るべきところがない。
◯ゲーム
TRPGライクなゲーム。
行動起こすたびにいちいち成功か失敗かチェックが入り、失敗すると回り道を余儀なくされるため、ゲームのテンポがすこぶる悪い。
テキスト量が膨大で衒学趣味に満ちているが、ゲームにそういったところを求めている人が果たしてどれくらいいるのか疑問。
素材を集めてアイテムを錬成するの繰り返しでかなり厳しいゲーム体験だった。
『ロロナのアトリエ』等と異なりタイムリミットも設定されていないので余計に間延びしている。
ゲームの本質は反復なのかもしれないが、その本質をいかに感じさせないかが大事なんだと気付かされた。
ゲームで米づくりがわかるなんてウッソだろお前って思ったが、最近田んぼを始めた父親と話ができるくらいのレベルにはなった。
定期的にソニーが出すクオリティ高いゲームという感じ。
斬新なプレイ感覚ではあったが、イライラすることの方が多く、消火ミッションで久しぶりにコントローラーをぶん投げた。
2の方のマップデザインはゲームシステムとも噛み合っていて素晴らしい。
都市伝説、能力バトル、デスゲーム、群像劇、メタミステリのごちゃ混ぜ海鮮丼。
低価格でボリュームはそれなりだが、表現や演出は流石スクエニと言ったところ。
ただ、内容としてはメタミステリの手法が一昔前のような感じがするし
ゲームシステムも前例があって斬新とは言い難い。
一作目なのにFILE23って大風呂敷を広げて大丈夫かという気もした。
ゲーム界のオーパーツ。
リマスターの方だが、今プレイしても面白くてトロフィーコンプしてしまった。
年代ジャンプが思った以上に練られたシステムで、これを上手く活用してフラグを成立させたりと考えることが多かった。
リマスターで追加された忍者が強すぎるが、元々のゲーム難易度が高いので、良い調整だと思う。
BGMと3Dモデリングの出来が良すぎて、これアトリエシリーズと本質的に変わらなくないか?っていう疑念が汚染水くらい薄められた。
何を血迷ったか14年ぶりの新作。
相変わらずストーリーは意味不明だが、戦闘システムがしっかり3Dでリファインされてて良かった。
BGMも良く、前作の「サムデイ」をリミックスして収録されている点もポイント高い。
普通に面白いのに、このタイトルがスクエニのペルソナになれなかったのは、単純に野村哲也のキャラデザがダサいからだと思ってる。
複雑なストーリーなし、覚えづらい戦闘システムなし、余計なサブクエストなし、こういうのでいいんですわ。
アンジェラとリースは現代でも通用することをスクエニは証明してくれた。
こちらもリマスターをプレイ。
実はプレイしたことがなかったのだが、あまりハマれず、1周でお腹いっぱいに。
対立し戦うことや無駄に干渉することは必ずしも良い結果を招くわけではないというメッセージは前作から通底しているが、
プレイヤーに与えられる選択肢は少なく、最悪の結末を避けることができないのが何だかなあという感じ。
キャラデザは本作で一新されたが、ゲームシステムは完全に”あの頃”のまま。
ナンバリングが100くらいになっても変わらずにいてほしい。
本作で反射神経が求められるアクションゲームが厳しくなってくるというゲーマー中年の危機を自覚させられた。
プレイヤー側でキャラクターの善行と悪行を選択できて、それによってストーリー展開や使えるアクションが異なってくるが、
RPGと違ってレベルやアイテムの引き継ぎがないため2周目をプレイするモチベーションが湧かず。
下町の水道を直すために旅に出るという近年類を見ないほどの卑近さで始まるRPG。
法で裁けない悪を裁くと必殺仕事人気取りで命の選別をする主人公に対して無自覚に世界を破滅に導くヒロインをぶつけるあたりは強烈な皮肉だが、
その辺は有耶無耶になって最終的に何でも一人で決めずに仲間と相談することが大事!という明後日の方向に着地してしまう。
ゲーム難易度が意外と高くて、特に序盤に出てくるサッカー選手みたいな名前のボスがやたらと強い。
架空の病、風爛症と戦う人々の話。
おそらく狐憑病(精神病)が基となっているが、単純に過去に行われていた精神病患者に対する差別や偏見を詳らかにし糾弾するよう内容ではなく、差別や偏見と向き合いながらも治療や保障制度が整っていない段階での過渡的な問題としており、誰が悪いわけでもないと結論づけている。
また、人間の精神とは元々そんなに安定しているものでもないし、人によって程度の差こそあれできることとできないことがあるという当たり前の事実にも気付かされる。
目を背けがちなテーマではあるものの、不完全な人間を受け入れていこうという前向きなメッセージが感じられ、プレイ前の暗く重たい話という印象は見事に覆された。
話の引き込み方が巧みだと感じた。
主人公の春日は身代わりで長い間刑務所に収監される。出所後にその空白の期間と向き合うことになるわけだが、それが物語上の謎として機能し、プレイヤーが春日とリンクしてその謎を一緒に追うような構造になっている。
ただ、現実に根ざしたグレーゾーンというテーマはかなり際どく、そこでしか生きられない人々が少数ながら存在するのは事実だと思うが、
かと言ってそういった人たちによる違法行為を許してしまうと法治国家という前提が揺らぐ事態になるし、何よりも法律を守って生活する市井の人たちはアンフェアと思うだろう。
本作ではブリーチジャパンという極端な思想を持つ集団をあてがうことで何とかグレーゾーン側にも正当性をもたせているという感じだった。
中年の危機とか過去の精算とか色々な要素があるが、殺人を含めた違法行為や裏切りが蔓延る世界で人をどれだけ信用できるのか、というのが問いかけとしてあったと思う。
作中のトレバーは狂人という表現がぴったりの男だが、最後まで仲間を売るようなことはしない。
マイケルは、過去に仲間を売ったが、それは仲間よりも家族を優先したためという事情もある。
そして、フランクリンの決断はプレイヤーに委ねられることとなる。
ゲームとしては、操作性が悪いなかで乗り物の運転を強要されるシーンが多く、かなりストレスが溜まる。
ファストトラベルもわざわざタクシーを呼ばなければならないのが苦痛。
こういった仕様はリアリティを重視したうえでのことなのかもしれないが、ゲームとして割り切るべきところは割り切ってほしいと思った。
◯総評
今年は仕事で肉体と精神をだいぶ削られたため、ゲームに逃避することが増えた。
正直、ゲームはタイトルによっては40~50時間くらい消費してしまううえ、プレイ後に何も残らない作品も多いので、来年はもう少し控えたいところである。
ただ、ゲームに付随して素晴らしい音楽に出会えたことは望外の喜びであり、今回はその一部を挙げさせてもらった。
2023年はインプットもアウトプットも満足にできず、エンタメに関して言えばほとんど追うことができなかったと言っていい一年だった。
特にアニメは一年を通じてほとんど視聴しなかった。これは自分史上かつてないことだ。
そのため、年間のベスト作品の選定についてはそもそも候補がほとんどない状態なので何とも言い難いが、本は「化石少女と七つの冒険」、ゲームは「ヒラヒラヒヒル」、映画は今年のではないが「すばらしき世界」を挙げさせていただく。
今年も数少ないながら、触れることができてよかったと心から思える作品に出会えたことに感謝したい。以上。