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感想記

2024年 11月

 

 話題の作品。良くも悪くもとてもよく出来ている作品なので、傑作と言う人の意見もわかるし、鼻につくと感じる人がいるのも理解できる。

 自分はどちらかと言えば後者寄りで、確かに作画は素晴らしいが、ちょっと肩に力が入りすぎているように見えた。

 

 江川達也ドラえもん

 タルの魔法は10分で切れるというのがひみつ道具との大きな違いで、万能でないが故に主人公の本丸は魔法に依存しない人間に成長する。

 また作中には、良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことがその人に返ってくるという仏教的な言い回しが度々登場し、意外と啓発的な内容でもある。

 

ヴィーガンズ・ハム

ヴィーガンズ・ハム

  • マリーナ・フォイス
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 ヴィーガンヴィーガンを排斥する人々を皮肉った内容。

 またいくら違法な行為をして荒稼ぎしたとしても巨大資本には勝てないという現実も叩きつけている。

 

ザ・ハント (吹替版)

ザ・ハント (吹替版)

  • アイク・バリンホルツ
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 デスゲームものだが、どうしてこういう状況になったのかという動機の部分が斬新だと思った。

 序盤の「デスゲームものでは主人公は死なない」という不文律を打ち破る構成も面白かった。

 

 主人公の男のアスペルガー?っぽい感じがよく出ている。

 ラストで彼らが否定した”普通”はおそらく”普通”ではないので、話としては少し収まりが悪いように感じた。

2024年 10月

 

真実の男 大安吉日真太郎

真実の男 大安吉日真太郎

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 冒頭やあらすじだけ読むと、一般人とは異なった経験をしてきた真太郎が日本社会に切り込んでいく痛快な内容を期待してしまうが、蓋を開けて見ると一度レールから外れてしまった人生の厳しさ・残酷さがコメディチックに描かれている。

 個人的には最後の話が、一貫してシビアな視点で漫画を描く作者ならではのエールという感じで印象に残った。

 

銀と金 1

銀と金 1

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 莫大な金額を賭けたギャンブル勝負が描かれている。

 命を賭けて大金を求めた先に見えるもの、それがその人間の本質なのではないかという問いかけがあったように感じた。

 

 ループもの。

 ループする時間が2分間と短いのが新味だろうが、逆に言うとそのワンアイデアだけで成り立たせようとしている力業のようにも見えてしまった。

 

 160度の高熱の地脈にトンネルを掘る、その一部始終が描かれた記録文学

 戦時下での重要な工事と言えど大量の死者が出ている状況でも敢行されたのだから、やはり当時の天皇の影響力はすさまじく、日本という国が危うい方向へ進んでいたことがうかがい知れる。

2024年 9月

 

aftersun/アフターサン

aftersun/アフターサン

  • ポール・メスカル
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説明が少ないタイプの映画。

観終わった後は正直疑問符しかなかったし退屈な映画だと思ったが、この作品から漂う不穏な空気や負のオーラはボディブローのようにジワジワと尾を引いた。

作中の最後の方でQueen・デイヴィッド・ボウイのunder pressureという曲が流れるのだが、この作品の雰囲気やテーマに非常にマッチしていて、観了後の無気味さややり切れなさの醸成に一役買っている。

 

 

ペルソナ3以降のペルソナシリーズの元になった作品、らしい。

ゲームとしては今プレイするとかなり厳しい。ゲームシステムも当然ペルソナシリーズと非常に似ているのだが、こちらはP3のタルタロスに相当するダンジョンで探索するメリットが単純なレベル上げと武器の生成に必要な素材集めくらいしかなく、しかも後者に関しては1回の探索でほとんど集まらないので、ゲームが進行している感覚が薄くて苦痛だった。

戦闘システムも至って普通のターン制コマンド式で、ここにゲームとしての面白みは見出だせなかった。ただ、戦闘BGMは抜群に良い。

ときメモ式のキャラ育成とこの退屈なダンジョン探索の繰り返しになるので、流石に周回はやる気が起きず断念。

シナリオは意外としっかりした伝奇モノで良い意味で裏切られた。序盤~中盤あたりの何気ないかぐや姫の話が物語の核心に繋がる構成も良い。

前述した通りゲーム部分は改善の余地ありなので、リマスターではなくリメイクしてほしかったが……。

 

2024年 8月

インサイドヘッド2

 監督曰く「自分自身を受け入れることをテーマとしている」とのことだが

 個人的には認知の歪みが生成される過程が描かれているように思った。

 ストーリー自体は前作同様ありふれているが、思春期の人間関係を描いているので、思いの外観ていて疲れた。

 

 

 山王戦を宮城リョータの視点で描くという試み自体は面白かったが、明かされた宮城の過去が想像以上に重たいし、彼のイメージを覆すような内容だったと思う。

 また宮城を語るうえで彩子の存在は欠かせないはずなのだが、彼女とのエピソードは作中でほとんど出てこないのも原作ファンとしては違和感があった。

 声優に関してもアニメを観ていた世代としてはやはり違和感を覚えたし、そもそも皆似たような声で判別が難しかった。

 とは言え、令和の時代に山王戦を映像化しただけでもこの作品には価値があると思うし、豊玉戦に関しても何かの折に映像にしてほしい。

2024年 6月

◯映画

 Winnyというファイル共有ソフトを通じた著作権侵害をめぐる実際の裁判を基にしている。この映画は開発者の金子氏やその弁護団の側の視点に立って描かれ、警察側の主張や捜査の手法に疑義を呈するかたちとなっているが、近年では漫画村の件があったように違法アップロードの温床となる枠組みをつくった人間が責任を問われるケースもあるため、結果的に無罪となったとはいえ一方的な内容にするには少し説明が足りない気がした。

 

FALL/フォール

FALL/フォール

  • グレイス・キャロライン・カリー
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 ロッククライミング中に夫をなくした女性が過去を乗り越えるために友人と地上600メートルの電波塔に登るが、降りる際に梯子が崩落し取り残されてしまうという内容。塔からの脱出を描いたワンシチュエーション映画と言ってしまえばそれまでだが、地上600メートルの恐怖が存分に表現されており、また人間の死についての欺瞞、生についての本質を描いていて意外にも中身がしっかり詰まっている。終盤でちょっとしたサプライズがあるのも良かった。

 

 およそ20年ぶりの新作。流石に当時の内容はほとんど覚えてないが、本作の視聴にあたってはキャラの名前や用語をなんとなく覚えていれば支障はないと思われる。前作の後も各地で紛争は続いていて、紛争介入に追われるキラやラクスたちの前にコーディネーターを超えるアコードという人類が現れ、デスティニープラン再興のため計略をめぐらせるというあらすじだが、中身はロボットアクションというよりはラブロマンス。遺伝子レベルで通じ合う相手よりも自分の自由意志で決めた相手を選ぶことでデスティニープランというディストピアを再度否定する流れは確かに収まりが良かったが、自由恋愛で溢れた人間に対して「誰かがあなたを見ているから未来に期待しろ」というのは無責任すぎて失笑。

 

◯アニメ

 東映がかなりの資金と時間を投じてつくった作品らしい。近年稀に見るほど主張強めの主人公で、ロックンロールという題材から現代社会に対してのカウンター的な要素を多分に含んでおり、お金がかかっている割に中々挑戦的な内容だった。個人的には若い人にはこういう生き方はしてほしくないと思った。

 

2024年 5月

◯映画

 生き残った前作の主人公がテロリストとなり、本作の舞台である大東亜共和国に宣戦布告するのだが、国側はBR法を改正し、今度は中学生とテロリストを殺し合うように仕向けるという内容。

 大人がつくったルールへの反抗がひとつのテーマと思われるが、今の大人もかつては子供だったわけで、テロリズムを通じて若者たちがそういった因果に絡め取られていく様も描かれている。

 

◯漫画

まず思ったのは導入部分がすごく丁寧なこと。

そして、行為の際に現れる人格を巧みに描いている。

顔の描き方に癖があるものの、絵のレベルも非常に高い。

 

この漫画家も非常に画力が高いとは思ったが、絵柄が少しポップでかつアメコミチックな劇画調でもあるので、アダルトとしてどうなのかなという気はした。

 

上2つの漫画家と比べてしまうと、デッサンが狂っているところもあって絵のレベルとしては少し落ちるかも。

ただ、アダルトコミックとしては、かなり本質的な内容となっている。

 

既刊まで。

大丈夫という精神状態になることを生きがいとする女性と生物の精神状態が落ち着いているときに放出される安定物質を摂取することによって生きる謎の生物との日常生活を描いた作品。

Twitterの人たちが好きそう(偏見)な漫画。

次巻で完結なので、内容に関してはその時に触れることとする。

 

漫画アプリで2巻の途中くらいまで。

主人公は身体能力に恵まれたスポーツをするために生まれたような人なんだけど、競争を好まず仲間と楽しくスポーツしたいという意識が強いため、周囲との歯車が噛み合わずに苦悩するという内容。

球漫画だが、野球は主題ではないので、知らない・興味がない人でも楽しめる。

とにかく切り口が斬新で、競争に対して何の疑問も抱かなかったこれまでの時代では生まれなかった作品だと思う。