今更ながらTRICKのTVシリーズを視聴したので、簡単に感想を記しておく。
シーズン1
EP1
ビッグマザー、母之泉。
一発目ということで空中浮遊をするわかりやすいタイプの霊能力者が出てくる。
寝ている間に毒殺したトリックは、外の散水栓から毒を入れるというのがかなり際どくはあるものの、一応成立はしている。
ラストの上田を撃った理由が超能力を否定したいからというものではなく、単純に腕時計が逆の腕についているという手がかりから導き出したものだったというのが好印象。
EP2
消された村、ミラクル三井。
独特な登場人物だらけのTRICKの中でもこのミラクル三井は篠井英介の怪演のせいか特に印象に残ったキャラクター。
首なし死体が上田なのか判別するのに股間の大きさを確認するという手法に失笑しつつも、死体が誰のものなのかわかると警官の消失トリックの謎も解けるという連鎖が鮮やか。
EP3
瞬間移動殺人、遠隔殺人。
個人的に一番好きなエピソード。
最後の銃殺だけ被害者の死亡推定時刻が示されていないという点がミソで、携帯からわずかに聞こえた音だけを頼りにアリバイトリックを見破るというのが本格。
最初に山田が披露した推理を偶然に頼りすぎていると超能力者側がロジックで否定するあたりも面白い。
EP4
千里眼を持つ男。
部屋の間取りを見透すトリックは力業だが、助手が関西人であったせいで「橋」を「箸」と聞き間違えてボロが出たというオチは好き。
EP5
父を殺した真犯人、黒門島のエピソード。
偽の木札の裏にダイイング・メッセージが残っていたというオチは笑ってしまった。
霊能力は存在するのかしないのか、結局明らかにしないあたりは偉い。
シーズン2
EP1
六つ墓村、落ち武者の謎回。
ここにきて初めてのフーダニット。
ただ、被害者に水を飲ませるあたりが不自然すぎてすぐに犯人を特定できてしまうのが残念。
犯人を追い詰める決め手は、きちんと手がかりを提示したうえで意外性があって良かった。
EP2
百発百中の占い師。
これまで通りの対霊能力者という構図を見せつつ、その裏で復讐劇を進行させるという奇を衒う展開。
霊能力者のインチキを見破ることは出来ても、復讐を防ぐことはできないあたりに山田と上田の探偵としての限界が示されている。
EP3
失踪者を見つけ出す男、サイトレーラー。
人面タクシーが人をすり抜けるトリックがかなり凝っていてこれだけでも楽しめる。
被害者が眠っているうちに階を移動させておくというトリックも好き。
この話も霊能力者戦に隠された復讐劇なのだが、一見しただけではわかりづらい部分がある。
締めの上田の台詞が良い。
EP4
天罰を下す子。
犯人が霊能力者を利用して殺人事件を起こすというメタな内容。
霊能力者とは無関係の山田の潜入調査が、霊能力者が犯した事件と繋がり、逆に上田の依頼人が実際には霊能力者とは全く無関係というちぐはぐな展開が面白い。
EP5
妖術使いの森。
全体的に大仕掛けが多いが、ノイズキャンセリングを利用した音のトリックはまずまず。
シーズン3
EP1
言霊で人を操る男。
重機で建物を持ち上げて景色を変えたり、白い鳥居に虫をたからせて黒い鳥居に変えたりとかなりバカバカしく大味なトリックが多い。
霊能力者が周囲の人間を利用するのではなく、周囲の人間が霊能力者を利用するという構図はシーズン1の母之泉に通じる部分があり、原点回帰がテーマなのかもしれない。
EP2
瞬間移動の女、スリット美香子。
こちらもトリック自体は大味だが、スリットを入れる際の演出だとか、美香子が何故スリットの入った服を着ているのかという部分にまできっちり説明が入っているあたりは好印象。
EP3
絶対に死なない老人ホーム。
食べられるおてもやん像には失笑。
父親が偽物のようで実は本物という反転は良いが、やり方がまどろっこしい。
EP4
駄洒落歌の謎。
ここに来て二発目のフーダニット。
毒殺の方法が秀逸で、犯人がメイクをするシーンが多かったため違和感もなかった。
見立てをした理由もちゃんと用意されていて、TRICKの中でも本格度が高いエピソードのひとつ。
EP5
念で物を生み出す女、霊能力の真実。
霊能力や呪いによって自殺をしたとした場合に、それは自分の意思によるものなのか、それとも本当に霊能力や呪いによるものなのか、という問題を提示している。
千賀子がどうやって山田が書いた封筒の中身を確認したのか、明らかにされていないような気がするのだが、単純に後ろから覗いただけなのだろうか。
総評
シーズン1では対霊能力者という構図を見せつつ、殺人のトリックを暴くというミステリの形式をとっていたが、シーズン2ではその構図の背後で事件を起こしたり、その構図を利用した犯罪が行われたりとシーズン1をメタる展開がなされている。
シーズン3は原点回帰とも言える作風だが、トリックがかなり大味になり、駄洒落歌のエピソード以外ミステリ成分はかなり薄まっていると言っていい。
またシーズン1では嘘を暴き真実を告げることが必ずしも良い結末を生み出すとは限らないというひとつのテーマというかメッセージが通貫されていたが、シーズン2以降ではこのテーマはあまり直接的ではなくなり、作品全体としてのまとまりが損なわれたように見えるのが残念。