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感想記

2022年11月 感想まとめ

●本

 今年の本ミスを先取り。

 方舟はクイーン式のロジカルミステリや危機的状況下における名探偵に対する強烈なカウンターパンチ。

 逆に白井智之は特殊状況というここ数年の流行の枠の中でクオリティの高い作品を出したという感じ。

 

●映画

 自らが死刑に追い込んだ殺人鬼にヴェノムの細胞の一部が取り込まれてしまい、カーネイジとなって復讐しに来るという内容。

 全体的に説明がほとんどなくて、アクションシーンも終始暗くて見づらい。

 憎しみが先行して自制が効かなくなったカーネイジを、相反する思考を持ちながらもどうにか人間と共生しているヴェノムが打ち破るという構図は暗示的。

 

ゴールデン・リバー(字幕版)

ゴールデン・リバー(字幕版)

  • ジョン・C・ライリー
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 ゴールドラッシュの時代、川底に眠る砂金をあぶり出す薬品を開発した化学者と彼を追う殺し屋の兄弟の話。

 父親を殺したときから破滅の道へとひた走るイケメンの弟と普通の暮らしに憧れる醜い兄という対比を軸に展開していく。

 化学者の黄金を元手に真の民主主義社会を築くという夢や弟の雇い主を殺して自分がトップに取って代わるという野望は欲をかいたことで一夜にして崩れ去るが、それでも帰る場所があるという希望が提示されている。

 

武器人間

武器人間

  • カレル・ローデン
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 第二次世界大戦の最中、味方の救難無線によりナチスドイツの占領地へ赴いたソ連軍一行が、肉体に銃や刃物を取り付けられた改造人間と出くわし、戦うことになるという内容。

 武器人間のデザインはたしかに面白いが、POV視点のせいで(特殊メイクの粗をごまかすため?)じっくり鑑賞できないのが残念。

 ファシズム共産主義といった思想が激しく衝突していた時代だったが、ドイツ人の脳とソ連人の脳を同じ頭に右脳と左脳で同居させるシーンが印象的。

 

 「ライ麦畑でつかまえて」や「ナイン・ストーリーズ」で有名なサリンジャーの半生を描いた映画。

 サリンジャーは裕福な家庭で作家を志したが、軌道に乗り始めた頃に戦争が始まり精神を病んでしまう。

 結果的にそういった経験が作品に深みを与え、「ライ麦」のヒットに繋がり彼は時の人となるが、周囲の熱狂を疎ましく思うようになり、田舎に移住し隠遁生活を送ることになる。

 書くことや語ることに対しての苦しみが中心として描かれている。

 しかもそれは、作家として評価を受ける前の誰にも認められない辛さであったり、戦争という圧倒的な現実を目にした後の虚無感によるものだったり、作家としてヒットした後の周囲との温度差だったりとそれぞれ性質が異なる。

 サリンジャーは仏教的な思想によってその苦しみからの解脱を図る。

 

 妻に先立たれ自殺を図るほど思い詰めた老人が、向かいに越してきた騒がしいイラン人の親子の影響で少しずつ周囲に心を開いていくという話。

 グラン・トリノとかに近い感じのよくある内容だが、こちらはエンタメに振り切っている感じ。

 チェーホフの銃を踏まえた丁寧なシナリオで、全てが繋がって問題が解決するラストは鮮やか。

 

 現代にウルトラマンを落とし込むという前作のシン・ゴジラと同じ試みだが、

ウルトラマンのようなヒーローものには前例がいくつかあるため、それほど真新しいとは思えなかった。

 また現実的という視点から考えると、人間よりはるかに優れた知能や技術を持つ生命体が人類に興味を持つかどうかという点からすでに怪しく、本作の地球や人類をめぐる攻防には終始疑問符がつきまとう。

 原作最強の怪獣であるゼットンが星を殲滅するための兵器として登場するのは面白いアイデアだったが、終盤の展開が駆け足なせいでウルトラマンと人類の共闘という展開自体は悪くないにも関わらず盛り上がりに欠けてしまったのが残念。

 

 戦時下の日本において生物兵器として開発された怪人と人間との現代における対立が中心となって描かれている。

 戦後、若者たちを中心として怪人の差別撤廃を訴える活動が広がるという設定が現実の日本における学生運動アメリカの公民権運動を想起させ、リアリティがある重厚な世界観の構築に注力したのがうかがえる。

 ただ、怪人は上級怪人ともなると超人的な力を有することになるわけで、当然人間としては危機感を覚えるだろうし、現実における人種差別とはいささかレベルが違うようにも感じた。

 最終的に怪人の素を生み出す創世王と呼ばれる存在がいなくなったことで、この世界における怪人差別は遅かれ早かれなくなることになるわけだが、

 その矛先は移民に向けられるだろうと匂わせている。

 作品としてのメッセージは差別撤廃という綺麗事ではなくて、異物を受け入れられず差別が横行すれば差別を受けた側も黙っていないかもしれないし場合によっては闘争に発展する可能性もあるという警鐘だと受け取った。

 

 廃墟に設置された扉から出てきて地震を起こす巨大なミミズによる被害を防ぐため、各地の扉を締めて回る”閉じ師”の男と出会った少女の話。

 扉は日本列島の各地に点在しており、本作では宮崎県から始まり、愛媛、兵庫、東京を経て宮城に至るまでの少女の旅を描いたロードムービーとなっている。

 過去作の「君の名は」や「天気の子」でも人智の及ばない災害は登場したが、本作では主人公の少女が3.11の被災者と明示しており、災害というテーマをより濃く押し出している。

 過去の災害の傷が癒えたとは言えない現状のなかで暮らす我々にとっては、かなりデリケートなテーマであるが、制作側もそれは折り込み済みで過激な展開は控えめ。

 被災者に寄り添った内容ではあるが、中盤以降の展開がハッピーエンドを成立させるためにご都合主義的になってしまっていて少し退屈。

2022年10月 感想まとめ

●ドラマ

 借金の取り立てに追われる無職の主人公が、大金を得るため閉鎖空間でのデスゲームに身を投じるという内容。

 良くも悪くも王道のデスゲームモノで、新規性はないが、期待を裏切らない展開の連続でジェットコースターみたいな感じで楽しめた。

 

●映画

 自意識強めの二人が運命的な出会いをして恋人になり、やがて生活のために自分を犠牲にした男と生活よりもやりたいことを優先した女とで価値観のズレが生じて別れるというちょっとほろ苦い感じのラブストーリー。

 良かった点

 ・作品全体で恋愛というものの本質を表しており、終わり方は切ないが、少しコミカルというかドライな感じで悲劇的にならないようにしている。

 ・女性の方が社会性があって男性の方が夢見がちという展開は往々にしてあるが、本作はその逆を行っており、今までのステレオタイプの男女観に疑義を呈している。

 良くない点

 ・登場人物が思考が極端に振れすぎている。結局、男は何のために自分が就職したのか最後まで気づかないまま終わる。

 

●ゲーム

 Y地区という街を舞台に起こるギャングの闘争や殺人事件といった出来事を絡めた群像劇。

 サイキック能力を持つタイプA、人並み外れた身体能力を有するが精神的な不安定さも併せ持つタイプBという特殊能力を持つ人間が登場するのも本作の特徴のひとつ。

 良かった点

 ・殺伐として緊張感があるストーリー。唐突に登場人物が退場するので目が離せない。

 ・登場人物がやたら多いが、「街」でもあったTIPS機能を採用しているので、情報を整理しやすい。

 良くない点

 ・序盤の展開が遅い。視点が異なるとはいえ同じ場面を二回見せられたりするので、テンポが悪い。

 ・不死というモチーフが緊張感をスポイルしている。不死の殺人鬼をどうやって攻略するのかという話になると思いきや、最終的に不死者は五人くらいになるので、キャラクターの生死がどうでも良くなる。

 

●アニメ

 国の対テロ組織「DA」に所属するリコリスと呼ばれる孤児たちがテロリストから日常を守るという話。

 明るいガンスリンガーガールのような印象

 良かった点

 ・ストーリーやキャラクターが王道やお約束を敢えて外さないようにしている。

  具体的には、不殺の最強主人公に周囲が殺人を強いるという展開。

  それに付随させる形で合理的で味方の危険すら関知しない相棒や主人公と対になる悪役を配置するなど。

 ・アクションシーンがかっこいい。特に千束のアクションは銃を撃ちながら敵に接近するというもので千束の能力を活かしたものでありながら、彼女のキャラクターも上手く表現している。

 良くない点

 ・王道やお約束の部分は言わば過去の作品のパッチワークなので、視聴していて既視感が拭えない。

 ・ガンスリンガーガールと同様に作品世界に合理性がないので違和感がある。

 

 サイボーグ化が当たり前になった近未来の世界で、母親の死と多額の借金によりサイバーパンクと呼ばれるならず者になることを選んだ青年の話。

 原作のゲームがあるが、未プレイ。

 良かった点

 ・どん底まで落ちた主人公が力を得て成り上がる展開と不思議な魅力がある少女とのメロドラマをかけ合わせたストーリー。

 その一方で仲間の死やサイバーサイコシスという症状にいつ見舞われるかもしれないというスリルも同居させている。

 良くない点

 ・ゲーム本編へ続く話という前提を指しておいても、ラストに希望がない。

  貧しい若者が破滅に向かって進んでいくという典型的なストーリー。

 

 

2022年9月 感想まとめ

●アニメ

 大災害で娘を失った男の前にアンドロイドの少女が現れるという冒頭から始まるストーリー。

 不器用な男がアンドロイドの少女を娘として受け入れるまでを描いている。

 良かった点

 ・中盤の二転三転する展開は驚きがあって引き込まれる。

 ・ラストシーンの鮮やかさ。

 良くない点

 ・終盤は話が大きくなるため、それまで描いていた家族という卑近なテーマから乖離していく。

 ・失ったものは基本的には取り戻せないという人生の本質を描いていない。いわゆるご都合主義

 

●漫画

 念じることで物質に小さな穴を開けることができる超能力を持つ大学生が、行方不明となった大学教授の消息をそのゼミ仲間と共に追っていくという内容。

 田舎の閉鎖的な環境とそこから逃れられない人々を描いている。

 良かった点

 ・謎や登場人物の意味深な台詞によって続きが気になる。

 ・上記に加えて穴を開ける能力など不穏な要素が多く、作品全体に緊張感があるものの、主人公がのほほんとした性格のため、そこまで重たくはない。

 良くない点

 ・この手の作品に多いが、引っ張った割には真相が大したことない。肩透かし。

 

2022年8月 感想まとめ

●本

 ウエルベックを読むと自分の性欲の薄さを感じる。

 

●漫画

 既刊の20巻まで。

 序盤は単なる学園ギャグ漫画だが、徐々にキャラクターたちの関係性が進展していくのが特徴。

 

 

 革新派ヤクザのパーティーに二人組の透明人間の殺し屋が現れる。

 5人のヤクザはそれぞれ視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚に優れ、各々の能力を活かして殺し屋と対峙するという話。

 能力バトル漫画ではあるが、透明人間側の身体能力が高すぎてヤクザが単純に力負けするというパターンがほとんど。

 終盤は透明人間の正体に迫るという展開で、かなり明後日の方向へむかってしまう。

 

 

 人に寄生し、人を食らう寄生生物の脅威を描く一方で、他の生物に寄生しなければ生きられない矮小な存在としても描いている。

 また、地球の支配者である人類へ環境問題などの責任を問うてもいるが、人間が地球視点で物事を考えるのはおこがましいとし、一人の人間が考えられるのはせいぜい自分とその周りの人間くらいのことであると諦観も示している。

 

 

●映画

 他人のために自らの命を投げ出した母を理解できずにいた少女が、仮想世界での”竜”との出会いを通じて母の思いを知るという内容。

 現実から解き放たれることで起こる人の再生と匿名性の高い世界での他者との距離感や現実における信頼関係を築く厳しさ・難しさが描かれている。

 少女は母の死ではなく、家族よりも他人を優先した母の行為によって歪んでしまったというのがポイントで、この作品は家族や身近な存在だけではなく、どこかで助けを求めている見知らぬ誰かも含めた広い視点から語られている。

 冒頭から少女と父親の不和が取り上げられているが、その解消には終盤のほんの僅かなシーンしか費やされていないことからも本作が家族をメインテーマにしていないことは明らかで、細田守の過去作と比較すると社会的・公共的な内容であると言える。

 

 もっと爽やかな話だと思い込んでいたが、登場人物が結構打算的だし、終わり方はかなり湿っぽい。

 一国の王女が市井の人間の生活を体験することで、自らの立場や責任の重さを実感する話だが、もう少し拡大解釈すると「結ばれなかった恋や楽しかった思い出は人生において無駄なのか?」という問いかけがなされているとも捉えられ、犠牲にしたものや失ったものを認識することで今という時間をより強く感じることができるという前向きな回答を示している。

 

●アニメ

 警察モノは大きな事件の捜査を取り扱うことが多いが、本作の主人公が新人女性警官であることから巡回や交通切符を切ったりと地味な仕事を取り上げることが多い。

 作者が元警察官であることからリアルな描写が多く、新人警官の苦労や警察官という仕事の過酷さがよく伝わってくる。

 反面、ドラマチックな展開は少なめで、日常系の作品を見た時に近い視聴感だった。

 

 社会福祉公社というイタリア政府の特務機関においてサイボーグ化し殺し屋としての使命を負わされた少女たちとそのパートナーである男性たちとの関係を描いた作品。

 シリアスな雰囲気の作品だが、設定に必然性が感じられなかったり、主人公たちが何と戦っているのかあるいは戦わされているのかといった背景の説明が十分でないため、どこか腑に落ちないところもある。

 少女たちは条件づけ、いわゆる洗脳を受け、パートナーの男性に好意を寄せるように仕組まれ、なおかつこれにより記憶の欠落が起きやすくなっており、少女たちの感情はどこまでが本物なのかというアイデンティティの問題もひとつのテーマとなっている。

 

2022年7月 感想まとめ

●本

 特に語ることはなし。

 

●ドラマ

 序盤、中盤あたりは男の弱さや脆さにフォーカスを当てた展開が多く、刑事ドラマというよりは人間ドラマだったが、終盤は異常殺人者の逮捕劇といった感じで回帰する。

 捜査一課時代の黒木は成果を上げる一方で後輩の佐久間の恨みを買い、最終的に恋人を失ってしまう。

 こういった黒木の背景から過去の自分を否定しつつ再起を図るという話の方が収まりが良かった気がするが、結局黒木が昔とほとんど同じ行動を取って事件を解決するという流れになっており、唯一精神科医の松尾だけがこの問題に自覚的で薬を盛って黒木に捜査をやめさせようとした。

 最終的に黒木は備品係に戻っているわけで、この物語で描きたかったのは一人の刑事の再起ではなく、過去の因縁との決着と過去の自分との決別だったのだろう。

 

●映画

 最初はホラーサスペンスといった風だが、同じ一日を繰り返すことで主人公がたくましく成長し、運命に立ち向かうようになる。

 作中のラストで言及しているとおり、本作は「恋はデジャ・ブ」のバリエーションのひとつである。

 

 おそらくループと来たら次はパラレルワールドだ!といった感じで作られた作品。

 完全にホラー路線を逸脱し、SFサスペンスに舵を切っている。

 

 

●アニメ

 現代に甦った諸葛孔明が歌手のプロデューサーになるという話。

 内容自体は一般的なサクセスストーリーだが、三国時代に使われた計略をモチーフにした作戦で集客するという点が面白いアイデア

 

 

 

2022年6月 感想まとめ

●映画

 

 時間が急速に進んでいく浜辺を舞台としたワンシチュエーション映画。

 老いや死が近づいてくる恐怖を描きつつ、人生における時間が解決してくれる問題についても言及している。

 オチに関しては食傷気味だが、単純にこのテーマで上手い着地法が見つけられなかっただけのようにも思えた。

 

 

●アニメ

 

 久しぶりに長い感想が書きたくなるような名作だった。

 余命一年というタイムリミットが与える緊迫感とそれに伴う死生観。

 タクトやめろこを始めとする満月を取り巻くキャラクターの魅力やその背景の謎。

 満月と英知というわかりやすい関係性を軸にして展開される恋愛模様

 また歌手という仕事が負う責任についても触れており、少女漫画が原作とは思えないほど重厚な内容となっている。

 よくよく考えると、アメリカへ行った英知に気づいてもらうために日本で歌手活動するというのは一年という期間ではかなり遠回りだし、そもそも16歳に変身した姿では満月とは気づかれないだろうからスタートで破綻していると言えるのだが、そういった粗がどうでもよくなるほど(そして、結果的にこの動機については大して意味をもたない)本作には勢いがある。

 そして、本作では満月だけでなく、どのキャラクターも等しく困難に直面し、その中で成長してゆく。

 タクトやめろこはもちろんのこと当初、満月と敵対関係にあった祖母の文月、アイドルの若松円、死神のいずみでさえも作中で気づきを得て満月と和解したり最終的に手を貸すまでの関係になっており、作中人物は基本的に性善説に基づいていて不快感は少ない。

 全52話で連続アニメとしては長尺だが、序盤から中盤にかけてはお仕事ものと恋愛ものの両輪で展開していき、中盤から終盤にかけては作中の謎を明らかにしていき、終盤では運命に逆らい大団円を目指すまでが描かれており、それぞれに波があって見る側を飽きさせない。

 これが土曜の朝に子供向け番組として放映されていたというのだから驚き。

 

 

 序盤の展開で家族関係の再生がテーマかと思いきや中盤以降は子供の無力さというのが罪や罰といったキリスト教的価値観を混じえながら展開されてゆく。

 親を含む上の世代からの呪いに囚われた子供たちは何者にもなれず幸せになれないとしているが、それを自己犠牲の精神で乗り越えるという形で話をまとめている。

 あまりよく覚えていないがウテナも大枠でこんな風な話だった気がするし、変奏曲と言えるのだろうか。

 

 飼い猫に憑依した天邪鬼を追いはらうために妖怪を退治していくという大筋はあるものの基本は一話完結型の学園ホラー。

 怪談なので当然妖怪や幽霊が出てくるのだが、その背景にあるのは旧校舎や裏山の開発である。

 つまり古いものから新しいものに変わっていくという変遷やそれに伴う自然の破壊に対して人間が感じる後ろめたさやバツの悪さを怪談の本質と捉えている。

 本作は全20話という構成なのだが、12話で終わらせた方が収まりが良かった気がする。

 

 

 きらら原作によくある話があってないようなパターンだが、終盤で主人公である優子の背景が明らかになり、ナレーションの男性が優子の父親と判明するラストは鮮やか。

 

 

 カレイドステージというサーカスでスターを目指す女の子の話。

 全51話の2部構成になっており、1部も2部もステージで幻の大技を披露するまでの過程を描いているが、似たような展開の繰り返しでも意味合いを変えてキャラクターの成長を表現している。

 そらとレイラの関係は象徴的で、この物語全てを総括していると言っていい。

 名作ではあるけど、通しで見ると結構ムラがあったという印象。

 

 

2022年5月 感想まとめ 

●ゲーム

 

 言語推理ADV。

 背景画像をタッチして、モノの名称から単語の意味を理解するという流れだが

途中から推測しないと言葉の意味を探ることができない。

 この単語の意味がわかったからこの単語についても意味が確定できるといった理解の連鎖のようなものがもう少し体感できればゲームとしてより面白くなったかもしれない。

 ストーリーは世にも奇妙な物語で言うと「冷やす女」みたいな感じ。

 

 

 ミステリードラマを見て推理するゲーム。

 手がかりから仮説を組み立てそれを基に推理し犯人を当てるというシステムなのだが、仮説を組み立てる際に行うパズルの作業感が強く、6章に至っては3回もやらされるのでかなり苦痛。

 仮説を組み立てている段階で事件の真相もなんとなくわかるので、難易度的にはかなり低めでライトユーザー向け。

 最後の真相についても、新本格ミステリ黎明期によく使われたトリックで今更感があった。

 令和の時代にスクエニから実写の推理ゲームが出たこと自体が最大の驚き。

 

●映画

 

 外見が与える印象とそれによって生じる誤解をコミカルホラーという形で表現している。

 外見に囚われず中身を見てくれる美人女子大生とくっつくオチにため息が出る。

 

 舞台がほむらの精神世界(ソウルジェムの中)だというところまでは理解できたが、

その先は抽象的な表現が多くぼんやりとしたイメージしか掴めなかった。

 筋としてはTVアニメ版と同様に「誰かを孤独をしないため誰かが犠牲になる」ということをひたすら繰り返しており

今回もほむらがまどかの力の一部を奪うことで、神であるまどかを現世に留めることに成功している。

 

 

 引退後の競走馬について描かれるドキュメンタリー。

 乗馬へと転向する馬がいる一方で、解体され馬肉となって食卓へ提供される馬もいる。

 馬の使い捨てをしている現状に対する問題提起がなされているが

厩舎など現場で働いている人は割り切ってやっている様子。

 個人レベルでどうにかしようとしている人もいて、それは立派だと思うけれど

あまり感傷的になっても仕方のない問題だとも思う。

 

 

 がんに侵され余命幾ばくもない大学教授が最後に好き勝手やる話。

 好き勝手やるの部分が結局セックスやドラッグになってしまうあたりがありきたり。

 大学内の親友とか娘とかは一応悲しむシーンはあるけれど

主人公ががんになったことによって周囲の状況が好転するとかそういう話ではなく

元々壊れていた家庭環境や職場の人間関係を明確にぶっ壊してスカッとする系。

 

 

 放っておけば周囲に害をなす存在を生かしておいていいのか? という問いが繰り返し提示される。

 共存を選べばその存在によって弱者は搾取され続ける。

 排除しても、今度は別の者が台頭する。

 作中で示される「世界の法則」とはおそらく弱肉強食や適者生存のことではなく

諸行無常や万物流転のことを示している。

 

 

 もし東京に巨大怪獣が出現したら……という内容のハードSF。

 平成ゴジラしか知らないので、ゴジラと言えば怪獣同士で戦うイメージなのだが

おそらく初期のゴジラのコンセプトに近い内容と思われる。

 行政や政府の初動の遅さを皮肉りつつも、有事の際における現場レベルでの団結力の強さを描いている。

 

 

 死の恐怖とかメメント・モリを描いた作品。

 テーマとしては結構重たいのだが、洋画なのでわかりやすいホラー作品に仕上がっている。

 

 

 アニメ版は未視聴。

 総集編らしく展開は早め。

 説明も少ないため、自分なりに解釈しながら見ないと途中で振り落とされる。

 テーマは、未来に対する不安や恐れ、決められた結末に対する反抗など若者向けのもので、ありきたりと言えばありきたり。

 少女革命ウテナから影響を受けていることは明らかで、ノスタルジーを感じた。

 

●アニメ

 

 令和のラブコメ

 陽キャ女と陰キャ男の掛け合わせなのだが、陰キャ男も高身長イケメンで性格も良くコスプレの衣装が作れるほど手先が器用とスペックが高い。

 一昔前のラブコメにあった読者目線からは魅力的に見えない男に対するカウンターなのか近年のラブコメでは男側も何かしらの能力を問われているように思う。

 またアニメやゲームなどのオタク文化陽キャ陰キャを繋ぐパスとなっており、陰と陽の断絶は一昔前よりも深くはないため、話にも一定のリアリティが生まれている。

 作品として重たい展開は序盤に少しあるくらいで、それ以降は徹底的に甘い展開が続く。

 途中、当て馬みたいなキャラが出てくるが、ギスギスするどころか逆に和やかな雰囲気になる始末。

 心地よさを突き詰めるという今っぽい価値観が作品にも反映されているように感じた。