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感想記

2022年6月 感想まとめ

●映画

 

 時間が急速に進んでいく浜辺を舞台としたワンシチュエーション映画。

 老いや死が近づいてくる恐怖を描きつつ、人生における時間が解決してくれる問題についても言及している。

 オチに関しては食傷気味だが、単純にこのテーマで上手い着地法が見つけられなかっただけのようにも思えた。

 

 

●アニメ

 

 久しぶりに長い感想が書きたくなるような名作だった。

 余命一年というタイムリミットが与える緊迫感とそれに伴う死生観。

 タクトやめろこを始めとする満月を取り巻くキャラクターの魅力やその背景の謎。

 満月と英知というわかりやすい関係性を軸にして展開される恋愛模様

 また歌手という仕事が負う責任についても触れており、少女漫画が原作とは思えないほど重厚な内容となっている。

 よくよく考えると、アメリカへ行った英知に気づいてもらうために日本で歌手活動するというのは一年という期間ではかなり遠回りだし、そもそも16歳に変身した姿では満月とは気づかれないだろうからスタートで破綻していると言えるのだが、そういった粗がどうでもよくなるほど(そして、結果的にこの動機については大して意味をもたない)本作には勢いがある。

 そして、本作では満月だけでなく、どのキャラクターも等しく困難に直面し、その中で成長してゆく。

 タクトやめろこはもちろんのこと当初、満月と敵対関係にあった祖母の文月、アイドルの若松円、死神のいずみでさえも作中で気づきを得て満月と和解したり最終的に手を貸すまでの関係になっており、作中人物は基本的に性善説に基づいていて不快感は少ない。

 全52話で連続アニメとしては長尺だが、序盤から中盤にかけてはお仕事ものと恋愛ものの両輪で展開していき、中盤から終盤にかけては作中の謎を明らかにしていき、終盤では運命に逆らい大団円を目指すまでが描かれており、それぞれに波があって見る側を飽きさせない。

 これが土曜の朝に子供向け番組として放映されていたというのだから驚き。

 

 

 序盤の展開で家族関係の再生がテーマかと思いきや中盤以降は子供の無力さというのが罪や罰といったキリスト教的価値観を混じえながら展開されてゆく。

 親を含む上の世代からの呪いに囚われた子供たちは何者にもなれず幸せになれないとしているが、それを自己犠牲の精神で乗り越えるという形で話をまとめている。

 あまりよく覚えていないがウテナも大枠でこんな風な話だった気がするし、変奏曲と言えるのだろうか。

 

 飼い猫に憑依した天邪鬼を追いはらうために妖怪を退治していくという大筋はあるものの基本は一話完結型の学園ホラー。

 怪談なので当然妖怪や幽霊が出てくるのだが、その背景にあるのは旧校舎や裏山の開発である。

 つまり古いものから新しいものに変わっていくという変遷やそれに伴う自然の破壊に対して人間が感じる後ろめたさやバツの悪さを怪談の本質と捉えている。

 本作は全20話という構成なのだが、12話で終わらせた方が収まりが良かった気がする。

 

 

 きらら原作によくある話があってないようなパターンだが、終盤で主人公である優子の背景が明らかになり、ナレーションの男性が優子の父親と判明するラストは鮮やか。

 

 

 カレイドステージというサーカスでスターを目指す女の子の話。

 全51話の2部構成になっており、1部も2部もステージで幻の大技を披露するまでの過程を描いているが、似たような展開の繰り返しでも意味合いを変えてキャラクターの成長を表現している。

 そらとレイラの関係は象徴的で、この物語全てを総括していると言っていい。

 名作ではあるけど、通しで見ると結構ムラがあったという印象。