dryer

感想記

タイムリープと罰 Life is Strange

  Life is Strangeは一言で言うならば「バタフライ・エフェクト」ライクなゲームである。

 突如として時間を巻き戻せる能力に目覚めた少女マックスが親友であるクロエの命を救うためにその力を利用して過去を改変していくという内容だ。

 

 さて、時間を操作できるということは、この三次元世界においては神の視座を得るということになる。幸福を掴み、自分の身に迫る危険を回避し、他人の精神まで掌握できるだろう。

 しかし、この手の物語で必ず主人公は苦悩することになる。それは何故かというと、より高次の存在が彼・彼女の前に立ちふさがるからである。Life is Strangeではそれはカオス理論だとか運命などと表現される。

 

 「恋はデジャ・ブ」ではビル・マーレイ演じるフィル・コナーズは、ある一日を延々と繰り返すことになる。ループに気づいたフィルは、それを利用して好き放題を行うが、どれだけ頑張っても意中のリタを口説き落とすことができなかったり、どれだけ上手くやっても寝て起きたらまた同じ一日が始まることに絶望し、一時は精神を病んで自殺を繰り返すまでになる。その後フィルはリタに救われ二人は結ばれて、そのことによってかループが解かれてハッピーエンドとなる。

 

 「バタフライ・エフェクト」はこの「恋はデジャ・ブ」のカウンター的作品と言えるだろう。主人公のエヴァンは幼馴染の女の子を救うためにタイムリープをして手を尽くすが、状況は良くなるどころか悪くなっていく。最終的に物語は、エヴァンが彼女との関係を絶つことで彼女を救うという苦い結末を迎える。

 

 「恋はデジャ・ブ」が高次の存在によりループの網に絡め取られるのに対し、「バタフライ・エフェクト」は自らが高次の存在に近づく能力に目覚める。フィルが高次からの祝福を受けたのに対し、エヴァンはまるでイカロスのごとく戒められたのだ。

 

  Life is Strangeではクロエの命を救うために多くの犠牲を払う必要がある。最終的にクロエを救うかその他大勢の命を助けるかというトロッコ問題がマックス(プレイヤー)に投げかけられることになる。

 

 クロエを救う選択をすれば、巨大竜巻で無残な姿になった街を見ながら物語は終わるのだが、結局のところこれでクロエの命の危機は去ったのかと言えば、おそらくそうではない。マックスはこれからもタイムリープをしてクロエを救い続けなければならないのである。それが運命に背いた罰なのだから。

 

 これは余談だが、作中の高次の存在はメタ的な解釈すれば、それは当然作者ということになる。

 「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(劇場アニメ)」では、登場人物が出演をボイコットすることで、この高次の存在の支配から逃れようとする荒業が用いられている。